カヌー専門店バイエルン
シーカヤックの修理方法
① FRPの修理方法
(1)FRPとは
FRP(強化プラスチック)とは、
FIBERGLASS(ガラス繊維)
REINFORCED(強くした)
PLASTICS(合成樹脂)
の頭文字を組み合わせたもので、「ガラス繊維を主な補強材とする低圧成形用熱硬化性樹脂の積層成形品」と定義されます。
(2)FRPの特長
FRPの特長を一言にして言うならば、強度(強さ)と成形性(作り方が容易)である、又同じ目方あたりの強さが鋼材やアルミよりも優れている。すなわち軽く強いことを示しています。
(3)FRPの作業手順
作業手順を理解する為にFRPの破損した個所を修理しながら説明していきますので何回も読み返してください。
<ステップ ①>
作業前に破損した個所の水気や汚れを十分に取り除くこと、夜に野外で修理すると夜露で濡れるので注意。 まず修理個所を布製のサンドペーパー(60番)でよくサンディング(荒くすること)します。この場合破損した部分より約5cm大きめに外周をサンディングします。
<ステップ ②>
サンディングした部分より約2cm位小さめにガラスマット#450(以下マット)を裁断します。
<ステップ ③>
②で切ったマットの約2倍の重量の樹脂を容器に用意する。
<ステップ ④>
温度と樹脂の量により硬化剤の量を決め、まんべんなく樹脂と硬化剤をかきまぜる。
<ステップ ⑤>
樹脂をマットに含浸させる前にサンディングで出た粉、ホコリを充分に落とし、修理個所に②で切ったマットにハケで樹脂を含浸させていきます。
※脱泡をしっかりと100%行ってください。
※脱泡とは、樹脂を含浸させたマット中にある空気を取り除くことであり、脱泡用の鉄ローラーを使用。なお、破損の程度により、マット又はクロスを重ねる。
(乾燥しているFRPの上に積層する場合はサンディング゙をしないと付かない)
<ステップ ⑥>
修理面が完全に硬化したら60番ペーパーで仕上げること
<ステップ ⑦>
ショックの掛からないもの、強度をさほど必要としないもの、又は美観上修理個所が本体より盛りあがると困るものは、本体より出た部分を60番ペーパーで落とし、同じ場所を耐水ペーパー180番で仕上げ水で洗い流す、次に400番、600番、800番と同じように順番に仕上げ、コンパウンドで仕上げ自動車用のワックスをかければ、ほぼ元通りになるでしょう。(但し強度を必要とする場合は裏側より樹脂とマット等で補強をする)
<ステップ ⑧>
修理が終わればハケはアセトンを2・3回変えて洗い、使用工具に付いた樹脂はアセトンで拭きとる。
樹脂 | 温度 | 硬化剤 | ゲル化 |
---|---|---|---|
冬期 | 25℃ | 硬化剤 | 10分 |
春秋用 | 25℃ | 1% | 20分 |
夏用 | 25℃ | 1% | 40分 |
※ゲル化とは樹脂の硬化が始まるまでの時間で、寒天状になるので作業は出来なくなる
※硬化剤1%とは樹脂の100gに対して硬化剤が1g又は約1ccのこと。外気温により硬化の速度が左右されるので寒暖計を参考に硬化剤を2~5%に調整する又、作業時間も考慮の上硬化剤の量を調整すること。
※硬化剤は特に目に入らないように注意して下さい。又皮膚に付着すると やけど症状を起こすので軍手等を使用し、もし樹脂、硬化剤が皮膚に付着すればアセトンで拭き取り、石鹸で洗い流す。
※樹脂は、冬用、春秋用、夏用とあるので必要な量だけ買うようにする。※樹脂等溶剤は、火気厳禁・冷暗所に保管・密封して水分、油、ごみ等が混入しないようにする。
◆FRPに必要な用具( ホームセンターで売っている)
- はかり ⇒ 樹脂、ガラスマットを計る家庭用料理はかり1㎏が適当である。
- 寒暖計 ⇒ 気温を計る。
- スポイド又はフラスコ ⇒ 硬化剤を計る。20ccまでの物が適当である。
- ハケ ⇒ 樹脂をガラスマットに含浸させる
- 容器 ⇒ ポリバケツ、空き缶、紙コップが適当である樹脂用とアセトン用に分ける
- ハサミ ⇒ ガラスマットを切る
- サンドペーパー ⇒ 布製60番ペーパーは荒仕上げ用耐水ペーパー180、400、600、800番は仕上げ用
- セロファン又は食品用ラップ ⇒ 脱泡又は表面をなめらかに仕上げるのに使う
- ウエス ⇒ 手、工具等に付いた樹脂は、ウエスにアセトンをしみ込ませて拭けば取れる。
- ハケローラ ⇒ 樹脂含浸用。大きな面積を含浸させるのに適している。
- 脱泡鉄ローラ ⇒ 脱泡用。大きな面積を脱泡するのに適している。
FRP製カヌー等の修理に関してのご質問はご遠慮なくご質問下さい。
② ポリエチレン製の補修方法
ポリエチレンは熱可塑性樹脂で熱を加えると溶解し、冷めると固まるので、「本体」と「補修素材」が同時に溶解しなければ一体化しないので、両方を同時進行で溶解するのがポイント。
劣化について
一般的にポリエチレンは年数が経てば、「紫外線劣化」と「経年劣化」が起こるため、できる限り太陽光が当たらない様に、保管には十分ご注意下さい。
修理の手順
①補修箇所の水分、汚れなどを落とす。
②補修用の素材を修理範囲の大きさに切るひび割れなどの場合はナイフ、カンナ等で細く削ると便利。
③適当な大きさに切った素材と艇本体の補修箇所を同時に「工業用ドライヤー」「ガスバーナー」などで暖める。工業用等がない場合、家庭用ヘアードライヤーでも可能だが、本体の修理箇所が熱くなるまでには少し時間がかかる。
※ガスバーナーで熱する場合、ポリエチレンが燃えない様に炎が当たる高さを加減する。
この時、艇本体を熱し過ぎるとその部分が溶け落ちてしまい、艇本体に穴が開いてしまう場合があるので充分注意する。
④熱した素材を補修箇所に適量、半田ゴテでまんべんなく穴等を埋めていく。
すこし冷えた時点で余分な部分をカッター等でそぎ落とす。
その後、常温で冷やし固まれば完成。